ブートは、年間20社の新規事業開発に携わり、50件以上ものMVP開発をおこなっております。
このように新規事業に多数関わる中で、より効果的な新規事業の立ち上げ、企画、戦略を組む際には、「市場調査」と「競合分析」は重要な要素になっていると実感しています。
これらを効果的に行うことで、自社の新規事業立ち上げにおける無駄なコストや労力を避け、事業の成功率を高めることができます。本記事では、市場調査と競合分析の重要性について解説しつつ、早期に新規事業を立ち上げるために効果的な手法もご紹介します。
市場調査の重要性
市場調査は、新規事業の可能性や将来性を評価するために不可欠です。市場調査を行うことで、以下のような情報を収集できます。
- 顧客ニーズの把握
- 市場規模の見積もり
- 市場の成長率
- 業界動向
- 顧客セグメント
以下では、市場調査の項目の重要な点を抜粋して解説しています。
顧客ニーズの把握
事業を成功させるためには、顧客ニーズの把握が欠かせません。顧客ニーズが無ければ、事業は成長せず、時間とお金を無駄にすることになります。例えば、2~3年経過しても、一切事業が立ち上がらず、結局負債ばかり積みあがってしまうなんてこともあるでしょう。
では、どうやって顧客ニーズを把握するのでしょうか?ブートは、顧客ニーズの把握には、以下の2つの方法が有効だと考えます。
- 顧客層にヒアリング
- 業界大手関係者とのコンタクト
逆に、次の方法は早期に新規事業を作っていく中での顧客ニーズの把握にはそこまでお勧めできないと考えています。
- アンケート調査
これらのおすすめの理由とそうでない理由を解説していきます。
【おすすめ方法1】顧客層にヒアリング
顧客層にヒアリングするというのは、自分の商品やサービスを購入してくれそうな人たちを見つけて、直接話を聞くことです。インターネットや知人からの情報だけでは、本当のニーズや痛みを知ることはできません。ヒアリングする際には、以下の点に注意しましょう。
- どんな問題や課題を抱えているか
- どんな解決策を求めているか
- どんな価値観や感情を持っているか
【おすすめ方法2】2.業界大手関係者とのコンタクト
業界大手関係者とコンタクトするというのは、自分の事業と同じ分野で成功している人たちと交流することです。彼らは、市場や競合の動向、顧客の傾向などをよく知っています。コンタクトする際には、以下の点に注意しましょう。
- 尊敬や感謝の気持ちを伝える
- 具体的な質問や相談事を用意する
- フィードバックやアドバイスを素直に受け入れる
【あまりおすすめできない方法】アンケート調査
一方で、オススメしない方法はアンケートです。アンケートは、多くの人の意見を集め、業界全体を把握することには相応しい手段ですが、次のような欠点もあるためです。
- 回答が過大に良いように書かれて実態を集められない
- 回答の基準を示すことが難しく、クリティカルな気づきにならないケースが多い
- 回答者が自分のニーズや痛みを正直に書かないことがある
そのため、より迅速に、かつ自身の事業の現在地を正しく認識するためにも、直接・対面での会話形式で、課題深掘りやニーズ検証を行えるインタビューによる市場調査の実施がが適切と考えられます。
業界動向
新規事業を立ち上げる際は、業界全体の動向を把握することが望ましいです。斬新なアイデアだが、法律改正や業界での動きに抑制されるという事例が少なくありません。また新規事業立ち上げの際には、他社も同様の事業を考案しているが、なぜ実行しないかを洗い出すことも今後のリスク回避のために必要です。
業界動向の調べ方については次に紹介する競合分析の調べ方の中で詳しく説明したいと思います。
競合分析の重要性
競合分析は、新規事業の競争力を評価し、自社の強みや弱みを把握するために重要です。競合分析を行うことで、以下のような情報を収集できます。
- 競合企業の事業戦略
- 競合製品・サービスの特徴
- 競合企業のマーケティング戦略
- 競合企業の強み・弱み
競合企業の事業戦略
競合分析をする理由は、無駄なコスト、労力を回避することです。自社よりもその業界に詳しい、知見がある企業を分析することで、なぜその戦略を行わなかったのか、過去にどのような失敗、成功をしているかを知り、自社のリスク回避をすることができます。
競合企業の強み・弱み
競合企業の強み、弱みは、その企業の実際のお客さんにインタビューすることで明らかになってきます。自然と接触機会を設け、その商品やサービスについての効用や不満を聞き出すことで、強み弱みを把握することができます。分析を活用する際には、同じ強みで勝負しない、弱みを補えるサービスを検討するといった活用が期待できます。
市場調査と競合分析の効果的な手法
市場調査と競合分析を効果的に行うために、以下の手法を活用しましょう。
デスクリサーチ
既存の情報を活用して市場調査と競合分析を行う方法です。口コミ、SNS評価、Webサイト、担当者インタビューなどネット検索だけでも、その企業を分析することができます。しかしネットの情報は事実のみ掲載されているわけではないため、デスクリサーチに注力しすぎることは避けましょう。
デスクリサーチで競合分析をするときに見るべきポイント
「デスクリサーチで競合分析を行おう」と思っても、いざやろうとするとどんなことを調べればよいかわからないなんてこともあるかと思います。
そんな時にブートでは、企業が公開している場合はIR情報、ない場合は企業HPや業界レポートなどを参考にして、次のような情報を収集します。
- 競合企業の概要(沿革、組織、ビジョン、ミッションなど)
- 競合企業の製品・サービス(特徴、価格、ターゲット、販売チャネルなど)
- 競合企業のマーケティング(広告、プロモーション、ブランディングなど)
- 競合企業の財務(売上、利益、資本金、株価など)
- 競合企業の関係者(創業者、経営者、投資家、パートナーなど)
これらの情報をすべて収集できるわけではないかもしれませんが、一部でも情報収集ができれば仮説を立てることができ、それをもとに次に書くフィールドリサーチに向けての準備ができると思います。時間をかけ過ぎず、目的を持って調べてみてください。
デスクリサーチを行う上での注意点
デスクリサーチは比較的簡単に行える方法ではありますが、以下のような注意点があります。
表)デスクリサーチを行う際の注意点・対応方法について解説
デスクリサーチでの注意点 | 対応方法 |
---|---|
情報が古くなっている可能性がある | 情報の公開日は必ずチェックする 検索をする際に1年以内などの比較的新しい結果のみに絞って検索する |
情報が偏っている可能性がある | ポジティブな意見が出てきたらネガティブな意見がないかキーワードを変えて検索する |
重要な情報があえて隠されている可能性がある | キーワードを変えて検索を行ってみる 公開されていない場合もあるのである程度調べたら諦める |
特に情報の公開日については必ずチェックしましょう。情報が古いものを調査結果としてしまうと、これから考えていく新規事業を誤った方向に進めてしまう可能性があるためです。
そのため古い情報を調べる際には公開日のチェックと同時に、検索ツールなどを使用して古い情報を表示させないなどの工夫も効果的かと思います。
フィールドリサーチ
直接顧客や競合企業にアプローチして情報収集を行う方法です。インタビュー、アンケート調査、実際に利用する(覆面調査)といった方法が挙げられます。これらの方法とその際の注意点について簡単に紹介いたします。そのサービスが対面である場合は、必ず対面する場所に訪れるようにしましょう。
インタビュー
競合企業の関係者や顧客に直接話を聞く方法です。事前に質問項目を準備し、録音やメモを取りながら行います。インタビューは、競合企業の内部情報や顧客の生の声を聴くことにより、精度の高い情報を知ることができる可能性が高いですが、以下のような注意点があります。
- 関係者や顧客にインタビューの許可を得る必要がある
- インタビューの結果が個人的な意見に偏っている可能性がある
- インタビューの結果を分析するのに時間がかかる可能性がある
上記のように時間がかかることや許可取りなどの手間がかかることもあります。ただし、声をすぐに聴けることから、スピード開発における調査では即座に効果的な情報収集を行える可能性もあると考えています。
アンケート調査
オンラインやオフラインで行えますが、オンラインでのアンケートが主流となっています。
アンケート調査は、競合企業の顧客満足度やニーズなどを数値化することができますが、次のような注意点があります。
- 回答率が低い可能性がある
- 回答者の属性や動機が分からない可能性がある
- 質問項目や回答方法にバイアスがかかっている可能性がある
- 調査会社を利用すると予定より費用がかかってしまう可能性がある
想起に新規事業を立案・構築していく際の市場調査・競合分析の方法としては時間やコストがかかる割に思ったほどの効果を出せないこともあると想定しています。
一方で新規事業をある程度軌道に乗せた後のブランドイメージ調査などの場合ではより効果を発揮する可能性が高いのではないかとも思っています。
覆面調査
競合企業の製品・サービスを実際に利用して評価する方法です。自分で利用するか、第三者に依頼するかします。覆面調査は、競合企業の製品・サービスの実際の品質や利便性などを知ることができますが、以下のような注意点があります。
- コストや時間がかかる可能性がある
- 覆面調査の結果が主観的になってしまう可能性がある
- 覆面調査の結果を一般化するのに難しい可能性がある
競合のサービスの実態を精度高く知ることができる反面、コストや時間がかかるケースも多く、スピード開発において利用できる可能性はあるものの、費用感やスケジュール次第での使用になることが多いと思います。
SWOT分析
自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を分析する手法です。競合分析と併せて実施することで、自社の競争力を把握し、事業戦略を見直すことができます。コンサルタントや事業戦略担当が使うフレームワークですが、4つの項目を埋めるだけでも、本事業で注力すべきことが明らかになってきます。
簡単にではありますがSWOT分析を行うための4ステップを紹介します。
1.自社の強み・弱み・機会・脅威を洗い出す
SWOT分析をするにあたり、まずは自社の強み・弱み・機会・脅威を洗い出します。
具体的に洗い出す際には、以下のような質問に答えてみるのがおすすめです。
- 強み:自社が競合企業に比べて優れている点は何か?自社が顧客から高く評価されている点は何か?
- 弱み:自社が競合企業に比べて劣っている点は何か?自社が顧客から低く評価されている点は何か?
- 機会:自社が利用できる市場や顧客のニーズは何か?自社が活用できる技術や資源は何か?
- 脅威:自社が直面している市場や顧客の変化は何か?自社が対抗しなければならない競合企業や規制は何か?
簡単には答えられない場合はこれまでに書いたデスクリサーチやフィールドリサーチを駆使して調査してみてください。
2. SWOTマトリクスを作成する
SWOTマトリクスとは、自社の強み・弱み・機会・脅威を表にまとめたものです。次のような形式で作成します。
洗い出した自社の強み・弱み・機会・脅威を、SWOTマトリックスに入力します。入力する際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 入力する項目は、具体的かつ客観的にする
- 入力する項目は、重要度や優先度に応じて並べ替える
- 入力する項目は、重複しないようにする
3.SWOTマトリックスを分析する
SWOTマトリックスを分析することで、自社の事業戦略を見直したり、改善策や施策を考えたりすることができます。分析する際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 強みと機会を組み合わせて、自社の事業の成長戦略を考える
- 弱みと脅威を組み合わせて、自社の事業のリスク回避策を考える
- 強みと脅威を組み合わせて、自社の事業の防衛戦略を考える
- 弱みと機会を組み合わせて、自社の事業の改善戦略を考える
これらの分析により現在考えている事業戦略の見直しなどを行うことができます。新規事業での市場調査・競合分析に息詰まった際にもこの分析を行うことでどのような検討軸が抜け漏れているかなども検証できます。是非トライしてみてください。
まとめ
新規事業戦略を立てる際に、市場調査と競合分析はリスク回避、事業成長の面において重要な役割を果たします。適切な手法を用いて市場調査と競合分析を行い、事業の成功率を高めましょう。
ブートは、新規事業の中でもWebサイト、Webサービスを中心とした事業の経験が豊富です。事業戦略時には過去の経験から適切な分析や調査をサポートします。また、アジャイルでシステム開発を行い、施策検証ベースに事業を進めることでローリスクで着実な成長を実行します。いつでも事業相談受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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