はじめに|システム開発費用の正しい相場と抑え方
システム開発は、企業の競争力を高めるために欠かせないものです。しかし、その費用については、多くの人が間違った認識を持っています。
例えば、「システム開発は必ず高額になる」「予算があるからこそ、自社のシステムを開発できる」などと思っていませんか?
実は、これらは大きな誤解です。システム開発費用は、要件や工程、会社によって大きく異なります。また、予算が限られている場合でも、工夫次第で質の高いシステム開発が可能です。
特に最近ではシステム開発における技術の進歩の著しく、ノーコード開発やローコード開発といった手法でより低コストかつ高品質なシステム開発の実現も可能です。
本記事では、システム開発費用の正しい相場と抑え方について、詳しく解説します。
システム開発とその工程について
まずはじめに、システム開発とは何かをおさらいしましょう。
システム開発とは?
システム開発とは、単にコンピューターのプログラムを作るだけではなく、ビジネスの課題解決や効率化を図るための全体的なプロセスを指します。
システム開発とは、企業や組織が抱えるビジネス上の課題を解決するために、コンピューターシステムを利用して仕組みを作ることです。システム開発は、単にプログラムを作るだけではなく、システムの企画、設計、開発、テスト、運用などの一連のプロセスを含みます。
システム開発の重要性は日々高まっており、多くの企業や組織がシステム開発に取り組んでいます。システム開発によって、以下のようなメリットが得られます。
- 業務効率化: 手作業や紙ベースの業務を自動化やデジタル化することで、時間やコストを削減できる
- 競争力強化: 顧客ニーズに応えるシステムを提供することで、サービスの品質や満足度を向上させる
- 新規事業創出: システムを活用して新しい価値やサービスを提供することで、市場のニーズを切り開く
- コンプライアンス対応: 法律や規制に沿ったシステムを構築することで、リスクやトラブルを回避する
このようなメリットを得るためにも、様々な企業などはシステム開発を行っています。
では次にそのシステム開発を行う工程について見ていきましょう。
システム開発の工程
システム開発には一般的に以下のような工程があります。
- 要件定義: システム開発の目的や必要な機能、納期などを明確にします。この工程でしっかりと目的や範囲を決めることが重要です。要件定義はシステム開発で最も重要な工程と言われており、失敗すると後々大きな影響が出ます。
- 設計: システムの概要や詳細な設計を行います。この工程でどんな機能や画面が必要か、どんな技術やツールを使うかなどを決めます。
設計は外部設計(基本設計)と内部設計(詳細設計)に分けられます。外部設計ではシステムの見た目やユーザーインターフェースを設計し、内部設計ではプログラムのロジックやデータベースなどを設計することが多いです。 - プログラミング: コードを書き、機能を実装する工程です。この工程で実際に動くものができあがります。プログラミングはプログラマーと呼ばれる役割の方が担当することが多いですが、昨今ではプログラミングが不要な「ノーコード開発」と呼ばれる開発手法により、プログラマーでなくてもプログラミング工程と同様のことができる場合もあります。
- テスト: 実装した機能が正しく動作するか確認します。この工程でバグや不具合を見つけて修正します。テストは単体テスト(各機能の動作確認)、結合テスト(複数の機能の連携確認)、総合テスト(全体の動作確認)などに分けられます。
- 運用・保守: システムを運用し、必要に応じて更新や改善を行います。この工程でシステムを常に最新の状態に保ち、ユーザーの満足度を高めることを目指します。運用・保守はシステムエンジニアやサーバーエンジニア、ネットワークエンジニアといった役割の方が主に担当します。
このように様々な工程を経て最終的にシステムが完成していきます。この中のどれが欠けても完全なシステムは完成しません。
特にどんなシステムを作るかを決める「要件定義」のフェーズは、システム開発において特に重要だとBoot株式会社は考えています。費用を抑えるうえでも重要なフェーズになってくると考えており、その理由は後ほど説明します。
システム開発の手法や種類
システム開発には様々な手法や作成するシステムの種類があります。システム開発を進めるうえで知っておいて損はない内容になっているため、ここで簡単にご紹介します。
システム開発の手法について
システム開発にはさまざまな手法があり、プロジェクトの規模や目的、要件などによって最適な手法が異なります。代表的な手法としては、以下のようなものがあります。
- ウォーターフォール: 上流の工程から下流の工程へと順番に進める手法です。各工程で進捗管理をしっかり行いながら進めるため、スケジュール管理やコスト管理がやりやすいです。しかし、開発途中での仕様変更には弱いです。
- アジャイル: 最初にすべての仕様を決めず、大体の方向性だけを決めて開発を進める手法です。システム全体を機能ごとに分割して開発し、開発途中でユーザーとコミュニケーションを取りながら進めるため、仕様変更や不具合にも素早く対応できます。しかし、全体の把握やスケジュールの管理が難しいです。
- スパイラル: アジャイルと同じく、システム全体を機能ごとに分割して開発しますが、各機能で要件定義からテストまでのサイクルを繰り返すことで、システム全体の完成度を高めていく手法です。仕様変更にも対応できるとともに、品質も重視できます。
また代表的な手法のほかに、よく出てくる開発手法のサブタイプのような手法も存在しますので紹介しておきます。
- プロトタイピング: 上述の開発手法とは少々観点が異なりますが、システム開発の中で、早い段階で試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーとレビューすることで認識のズレを解消する手法です。ユーザーの生の声を聞けることで、よりよいユーザー体験を実現できます。しかし、プロトタイプを作成するコストと期間が必要です。
- DevOps: 開発担当者と運用担当者が連携して開発する手法です。開発から運用までの一貫性や効率性を高めることができます開発担当者と運用担当者のコミュニケーションや協力が必要です。
このようなシステム開発の手法を要件や予算などを鑑みてプロジェクト運営側で判断し決めることが多いです。
開発するシステムの種類と特徴
システム開発には大きく分けて「汎用系」「オープン系」「Web系」の3種類があります。それぞれにどんな特徴やメリットがあるのでしょうか。この記事では、システム開発の種類と特徴について解説します。
汎用系システムとは
汎用系システムとは、汎用機と呼ばれる大型コンピュータで動作するシステムです。金融機関や行政などで使われており、高速で大量のデータ処理が可能です。しかし、仕様がメーカーごとに異なり、ベンダーに依存することが多いです。COBOLやFORTRANなどのプログラミング言語が使われます。
汎用系システムのメリットは、以下のようなものがあります。
- 大量のデータを高速に処理できる
- 高い信頼性やセキュリティを持つ
- 長期間にわたって安定して運用できる
汎用系システムのデメリットは、以下のようなものがあります。
- 仕様がメーカーごとに異なり、移行や統合が難しい
- ベンダーに依存し、コストや納期が高くなる
- 対応できる技術者が少なく、高齢化している
オープン系システムとは
オープン系システムとは、PCやサーバーで動作するシステムです。業務管理や会計ソフトなどで使われており、仕様が公開されており、ベンダーに依存しません。VBやC#などのプログラミング言語が使われます。
オープン系システムのメリットは、以下のようなものがあります。
- 仕様が公開されており、移行や統合が容易
- ベンダーに依存せず、コストや納期を抑えられる
- 対応できる技術者が多く、若年化している
オープン系システムのデメリットは、以下のようなものがあります。
- エンドユーザーのPCにインストールが必要で、管理や更新が煩雑
- データ紛失やセキュリティ侵害のリスクが高い
- 大量のデータ処理には向かない
Web系システムとは
Web系システムとは、Webブラウザで動作するシステムです。WebサービスやWeb業務システムなどで使われており、デバイスに依存せずに利用できます。HTMLやJavaScriptなどのプログラミング言語が使われます。
Web系システムのメリットは、以下のようなものがあります。
- デバイスに依存せずに利用できる
- エンドユーザーのPCにインストールが不要で、管理や更新が容易
- クラウド上でデータを保持でき、データ紛失の心配がない
Web系システムのデメリットは、以下のようなものがあります。
- インターネットに接続できないと利用できない
- セキュリティ侵害や不正アクセスのリスクが高い
- 拡張性が高い反面、変更や不具合に対応するコストが高くなる
このようにシステム開発には大きく分けて3種類のシステムの種別があり、開発するシステムの目的や要件に合わせて選択することが重要になります。
システム開発費用の相場
それでは、システム開発の費用について見ていきましょう。システム開発費用の相場は、要件の複雑さや開発会社の技術力、納期などによって大きく変動します。一般的に、シンプルなWebシステムの開発では数十万円から、複雑なものになると数百万円、あるいはそれ以上になることもあります。
開発費用を左右する要因は以下のようなものがあります。
- 開発するシステムの複雑さ
- 開発期間
- 開発会社のスキルレベルや経験
- 保守・サポートの内容
開発費用の算出方法
そもそもどうしてこのような要因が開発費用に関わってくるかというと、基本的に開発は人力で行われるため、次のような式により費用が算出されるためです。
費用=(A.人員の月当たりの単価)×(B.各工程に必要な月数)
例えば開発するシステムが簡単だとスキルが高くない人員でも対応できるため、A.人員の月当たりの単価が下がります。一方で開発する期間が長いと、B.各工程に必要な月数が長くなり、結果として費用が大きくなります。
このようにして、システムの難易度や開発期間を考慮することで費用感をコントロールできる可能性が上がります。
これらの要因を理解し、適切な予算設定・管理を行うことが、システム開発の成功に繋がります。
Boot株式会社では、予算300万円以下でシステム開発を行うための外注方法についての記事を紹介していますので是非参考までに見てみてください。
システム開発費用の詳細
システム開発の費用は、プロジェクトのステップごとに異なります。以下にそれぞれのステップの一般的な費用を説明します。
要件定義費用
システムの目的や機能を明確にする工程で、プロジェクト全体の10-20%程度が目安です。
設計費用
システムの全体像を設計し、詳細な仕様書を作成します。これも全体の約10-20%を占めることが多いです。
デザイン費用
UI/UX設計は、ユーザーがシステムを使いやすくするために不可欠です。全体の15-25%程度を想定すると良いでしょう。
開発費用
実際のコーディング~テストのフェーズを行う部分で、全体の40-50%程度を消費することが多いと思います。
これらの工程と費用感はあくまで目安ですが、例えば要件定義に当初想定の予算の50%を使うなどがないように予算進捗については目を光らせてみてください。
安く開発を行うための外注方法
予算が限られている場合でも、工夫次第で質の高いシステム開発が可能です。ここでは、安く開発を行うための外注方法について紹介します。
予算を明確に伝える
まず最初に、開発会社に対して予算を明確に伝えることが重要です。開発会社もその予算以上の無理は言わない・言えないため、あらかじめ予算を伝えているとその金額で収まることが多いと思います。
一方で、開発予算を高く出してしまうと、本来かかる費用以上の見積もりが出される場合もあるため要注意です。その際には、『この規模の相場はいくらですか?』というように、システム開発会社の基準をヒアリングするようにしましょう。
開発会社に要件を丸投げしない
自分たちでしっかりと要件を定義し、開発会社に具体的な指示を出すことで、余計なコストを抑えることができます。全てを丸投げすると、企画から要件定義、デザイン、開発、テストと自力でできる範囲も開発費用に盛り込まれます。ただし、慣れない外注には労力もかかるため、開発会社と相談しながら行う業務を決めましょう。
また、開発を管理するPMO(Project Management Officer)という、プロジェクト管理を専門とする役割を設けるのも効果的だと思います。開発会社の進捗を自社でも管理し、リスクなどが発覚した際に速やかに対応策を自社オーナーと検討するための役割を担い、費用が膨大にならないことに寄与します。
対応可能な工程は自社で行う
上記と重なる部分ですが、設計やテストなど、自社でも対応可能な部分は自分たちで行うことでコストを抑えることが可能です。特にテストは外注すると費用が高くつく場合が多いので、自社で行える範囲は自社で行った方が良いでしょう。
外注先の選び方に注意する
システム開発の外注先は様々な種類や特徴があり、例えば次のようなパターンがあります。
- システム開発会社: 専門的な技術や経験を持つエンジニアが多く在籍しており、一貫したサービスを提供することができます。しかし、費用は高めになります。
- フリーのエンジニア: 個人やチーム単位で仕事を請け負います。費用は安く抑えられますが、信頼性や品質管理が不安定になる場合もあります。
- クラウドソーシングサイト: インターネット上で不特定多数のエンジニアに仕事を依頼する方法です。費用は非常に安く抑えられますが、レベルやスキルに個人差があります。
これらの外注先のメリット・デメリットを考慮して、自社のニーズや予算に合った外注先を選ぶことが大切です。
開発機能の優先順位をあらかじめ決めておく
システム開発を進める中で機能の開発難易度が高いということが発生することもあると思います。そのようなケースに備えて、事前に開発する機能の開発優先順位を決めておくことで、大幅な費用増加を未然に防げる可能性が上がります。
システム開発会社の選び方
これまではシステム開発を外注する際に費用を抑える方法について解説してきました。ここではそのシステム開発の外注先選定時に注意すべき内容についてまとめました。
これ等の注意点を守らずに選定を進めると、本来払うべき費用よりも多くの金額を払ったりするケースも発生しえます。そのため、是非これらを参考にして、適正価格でのご発注ができればと思います。
見積もりを出し、費用相場・機能を比較検討
システム開発を外注する際には、複数の開発会社から見積もりを取得し、費用相場や機能を比較検討することが重要です。見積もりを比較することで、自社のニーズに合った開発会社を選ぶことができます。
しかし、見積もりの内容や算出方法は開発会社によって異なるため、注意が必要です。ここでは、見積もりを出し、費用相場・機能を比較検討する際のポイントについて紹介します。
見積もりの項目を確認する
システム開発の見積もりには、大きく分けて以下の9つの項目が含まれます。
- 要件定義費用: システムの目的や機能を明確にするための費用
- 設計費用: システムの全体像や構造を設計するための費用
- デザイン費用: システムの外観や操作性をデザインするための費用
- 開発費用: システムのプログラミングやデバッグを行うための費用
- テスト費用: システムが正しく動作するかを検証するための費用
- 導入費用: システムを完成させて公開するための費用
- 導入支援費用: システムの利用者に操作方法やマニュアルを提供するための費用
- 購入費: システム開発に必要な機材やソフトウェアなどを購入するための費用
- 交通費: 打ち合わせや作業などで発生する交通費
これらの項目が見積もりに明記されているかどうか、また内訳が詳細に記載されているかどうかを確認しましょう。見積もりが簡素化されている場合は、実際にかかる工数やコストが不明確になる可能性があります。また、見積もりに含まれていない項目が後から追加される場合もあります。その際には、追加料金が発生するかどうかも確認しましょう。
見積もりの算出方法を理解する
システム開発の見積もりは、一般的に以下の3つの算出方法で行われます。
- 類推見積もり(トップダウン): 過去の類似プロジェクトの工数やコストを参考にして見積もる方法。計画性が高く精度が高いが、過去事例がない場合は不適切。
- 係数モデル見積もり(パラメトリック): システム開発に関係する要素やパラメーターを数式化して見積もる方法。客観的で統一的だが、データの質や数式の適切さに依存する。
- ボトムアップ見積もり: システム開発の各工程や作業を細かく分解して見積もる方法。漏れがなく正確だが、大規模なプロジェクトには不向き。
これらの算出方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。開発会社によって採用する方法が異なるため、見積もりの根拠や前提条件を確認しましょう。また、同じ算出方法でも、工数や単価の設定に開発会社の経験や技術力が反映されることもあるため、見積もり金額だけでなく、開発会社の実績や評判もチェックしましょう。
見積もりの注意点を把握する
システム開発の見積もりを比較検討する際には、以下の3つの注意点を把握しておきましょう。
- 見積もり金額に正解はない: システム開発はオーダーメイドであり、見積もり金額は開発会社の判断や方針によって変わります。そのため、見積もり金額に正解はありません。予算やニーズに合った開発会社を選ぶことが大切です。
- 見積もり金額と品質は比例しない: 見積もり金額が高いからといって、必ずしも品質が高いとは限りません。逆に、見積もり金額が安いからといって、必ずしも品質が低いとは限りません。見積もり金額と品質は比例しないことを理解しましょう。
- 見積もり金額と契約金額は一致しない: 見積もり金額はあくまで概算であり、契約時に変更される場合があります。特に、要件定義や設計などの工程でシステムの仕様や機能が変更される場合は、追加費用が発生する可能性があります。そのため、見積もり金額と契約金額は一致しないことを覚えておきましょう。
以上が見積もりを出し、費用相場・機能を比較検討する際のポイントです。システム開発は高額な投資であり、失敗すると大きな損失になります。そのため、見積もりの内容や算出方法を理解し、自社のニーズに合った開発会社を選ぶことが重要です。
同じ業種・規模での開発実績がある会社を選ぶ
業界や市場の動向やニーズに詳しい会社を選ぶ 同じ業種や規模でシステム開発を行ったことがある会社は、自社のビジネスモデルや課題に寄り添ったシステムを提案してくれる可能性が高いです。
また、類似のプロジェクトを経験している会社は、開発工程や品質管理においても、予期せぬトラブルや変更要望に柔軟に対応できるスキルを持っています。
そのため、予算や納期のオーバーなどのリスクを低減できます。
このようにただ出てきた見積を確認するだけではなく、企業規模や実績についても簡単に分析することでよりFitする開発会社を選定することができるのではないでしょうか。
まとめ
以上、システム開発費用の相場とその費用を安くする方法について見てきました。予算が限られている場合でも、しっかりとした計画と適切なパートナー選びにより、高品質なシステム開発が可能であることを覚えておいてください。
最後に、システム開発は一度きりのものではなく、常に変化するビジネス環境に対応するための進化し続けるものだということを忘れないでください。開発は終了したら終わりではなく、その後の運用・改善がとても重要です。予算計画には、これらの要素も考慮に入れるようにしましょう。
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